粉ミルクは水道水で作れる? 沸騰させる理由と、水の選び方
粉ミルクに使う水は、家の水道水でよいのでしょうか。それとも、赤ちゃん用の水を買ったほうがよいのでしょうか。
ふだん問題なく使えている水道水は、粉ミルク作りに使えます。 一度沸騰させたお湯を用意し、粉を溶かす時は70℃以上にするのが基本です。
ただ、作り方を読むと「沸騰」「70℃」「湯冷まし」と、違う温度の話が出てきます。わたしも、その意味をよく知らず、ミルクを作るたびに迷っていた時期がありました。
水を選ぶ時と、実際に作る時。それぞれに何を確かめればよいか、理由も含めて整理します。
この記事でわかること
- 水道水を粉ミルクに使う時の基本
- 水を沸かす理由と、70℃以上のお湯で粉を溶かす理由
- 市販の水を選ぶ時の見方
- ミルクの冷まし方と、避けたい水の使い方
粉ミルクは、水道水で作れる
明治や雪印メグミルクは、粉ミルクの成分を、日本の一般的な水道水で作ることを前提に調整していると説明しています。毎日の調乳のために、必ず専用の水を買う必要はありません。
作る時は水を一度沸騰させ、70℃以上のお湯で、商品の表示に沿って粉を溶かします。飲ませる温度まで冷ますのは、そのあとです。
ここでいう水道水は、飲用に問題のない状態の水です。断水後などに水道局から使用について案内が出ている場合は、その内容を確かめてください。
井戸水は、蛇口から出る水でも、水道水とは確認する先が違います。明治は井戸水について保健所へ、浄水器やウォーターサーバーについては各メーカーへ確認するよう案内しています。
水を沸かすことと、70℃以上で溶かすことは別の工程
わたしが迷っていた、3つの疑問
わたしは、水を沸騰させること自体は理解していました。でも、何のためにそうするのかを、はっきりとは知りませんでした。
「もっと長時間沸騰させ続ける必要があるのかな?」
「沸騰直後に哺乳瓶に注いだらダメなんだっけ? もう少し冷めてから?」
「電気ポット使ってるけど、これってしっかり沸騰させたことになるの?」
深夜にそんなことを考えながら、ミルクを作っていた気がします。笑
上司から「これをして」と漠然と仕事を頼まれた時のようでした。言われた通りやったつもりでも、本当に正しくできているのかが分からない。
あとから理由を調べると、迷っていたのは「その温度で何をしたいのか」を知らなかったからだと分かりました。目的が分かると、手順のどこを守ればよいのかも見えてきます。
沸騰は、水を準備する時の加熱
厚生労働省が掲載するFAO/WHOの家庭向け手順では、調乳に使う水を沸騰させるよう案内しています。飲める水であっても、無菌とは限りません。粉を入れる前に、水を加熱して衛生的に用意するための工程です。
同じ資料には、電気ポットなどで沸かす場合と、火にかけて沸かす場合の両方が載っています。電気の機器なら沸騰して自動で切れるまで、火にかけるなら沸騰したことが分かるまで。電気ポットだから沸騰と認められない、ということではありません。
ただし、保温だけの状態や、低い温度まで温める設定は、沸騰とは別です。使っている機器の説明書で、どの操作で沸騰するのかを確かめます。
70℃以上は、粉を溶かす時のお湯の温度
粉ミルクは、完全に無菌の製品ではありません。70℃以上のお湯で作るのは、粉に含まれている可能性のある菌によるリスクを減らすためです。水を先に沸かしていても、粉を溶かす時に70℃を下回っていたら、この条件を満たせません。
整理すると、水を沸騰させるのは水の準備、70℃以上のお湯を使うのは粉を溶かす段階です。100℃か70℃か、どちらか一方を選ぶ話ではありません。
70℃ちょうどまで冷ます必要はなく、100℃に近い、沸騰直後のお湯でも作れます。雪印ビーンスタークも、乳児用の粉ミルクは沸騰したてのお湯で作れると案内しています。熱いお湯や哺乳瓶で、やけどをしないように気をつけてください。
できあがったミルクは人肌まで冷まし、手首の内側に少量を落として、熱くないことを確かめてから飲ませます。70℃以上というのは、あくまで粉ミルクを殺菌するためのお湯の温度です。赤ちゃんにその温度で飲ませる、という意味ではありません。
用意するお湯の温度の考え方は、こちらで詳しくお話ししています。
塩素やトリハロメタンのために、長く沸かす必要はある?
水道水の塩素は、水を消毒するために使われています。トリハロメタンは、その塩素が、川の水などに含まれる物質と反応してできるものです。東京都水道局は、水道水に含まれるトリハロメタンの量は水質基準以下で、安全性に問題はないと説明しています。
調乳の手順として求められているのは、水を一度沸騰させることです。FAO/WHOの家庭向け手順には、沸騰後に毎回5分、10分と沸かし続ける条件はありません。
一方、東京都水道局が案内する約5分の煮沸は、基準内に管理されたトリハロメタンを、さらに取り除きたい場合の方法です。同じ目的で浄水器を使う方法も挙げられています。この5分は「粉ミルクを作るために必要な煮沸時間」ではないので、毎回の調乳に一律に足さなくてよいのです。
また、煮沸などで塩素が減った水は、雑菌が増えやすくなります。東京都水道局も早めに使うよう案内しています。長く沸かしたから、長く置いておけるということにはなりません。
市販の水は、名前より使用条件を確かめる
硬度の目安は、粉ミルクのメーカーによって異なる
ミネラルウォーターを使いたい時は、まず、使っている粉ミルクの案内を見ます。水の硬度は、カルシウムやマグネシウムの量を表す目安です。
例えば、市販の水について、明治は硬度120以下、できれば60以下を案内しています。雪印メグミルクが勧めているのは、硬度0〜60mg/Lの軟水です。
数字に違いがあるので、「軟水なら何でもよい」とひとまとめにはせず、使用する粉ミルクの条件と、水のラベルを照らし合わせます。ただ、これらの数字は商品を選ぶ時の目安であり、超えたらすぐ体に異常が起きる、というものではありません。
また、水道水の硬度は地域などによって違います。日本の水道水がすべて60mg/L以下、と決めつけることもできません。気になる場合は、住んでいる地域の水道局の水質情報を確認できます。
「天然水」「純水」だけでは、使い方は決まらない
ボトルに書かれた名前だけでなく、調乳に使えるか、どの工程で使えるかを確かめてください。
市販の水も、まず一度沸騰させてから使うのが基本です。 厚生労働省が掲載するFAO/WHOの家庭向け手順では、ボトル入りの水も無菌ではないため、使用前に沸騰させるよう案内しています。明治も、市販の水は一度沸騰させてから使うよう説明しています。
一方、サントリー天然水は、工場で瞬間的に加熱殺菌していることを理由に、ミルクを冷ますための水としては常温のまま使えると案内しています。これは、水道水のように家庭で一度煮沸することなく、開栓してそのまま使えるという説明です。
このように、市販の水もメーカーによって沸かすかどうかの案内は異なります。なので実際に作る際には、使っている粉ミルクの作り方を確かめ、その手順に合わせましょう。サントリー自身も、粉ミルクに記載された調乳方法を確認するよう案内しています。
冷ますために足す水について、沸かすかどうか迷ったら、一度沸騰させてから冷ました湯冷ましを使いましょう。これなら、市販の水も一度沸かすというFAO/WHOや明治の案内に沿って用意できます。
開栓した水は、保存方法と使う量も考える
どの水を選んだとしても、開栓後は保存方法を守り、早めに使うようにしましょう。例えばサントリーは、開栓後は冷蔵庫に保管するよう案内しています。
調乳用には、一日で使い切りやすい容量を選ぶのも一つの方法です。残った分は、商品の保存条件を守って、大人の飲用や料理に回すこともできます。
翌日以降も調乳に使うなら、その水の表示やメーカーの案内で、開栓後の使用期間と、加熱が必要かを確かめてください。そのまま足せる水でも、開栓からの日数によっては煮沸を勧めている商品もあります。開けた日や保存状態が分からない水は、ミルクには使わないようにしましょう。
ミルクを人肌に冷ます、2つの方法
使う水を決めたら、ミルクを飲める温度に冷ます方法も選んでおきましょう。湯冷ましなどを使う方法と、お湯だけで作って哺乳瓶の外から冷やす方法があります。
湯冷ましなどを、できあがり量まで足す
まず、商品の作り方に沿った量の70℃以上のお湯で、粉をしっかり溶かします。そのあと、湯冷ましや、調乳に使えることを確認した市販の水を、できあがり量の目盛りまで足して混ぜます。湯冷ましは、一度沸騰させた水を冷ましたものです。
最初に入れるお湯の量は、商品の案内で確かめます。例えばアイクレオのバランスミルクでは、できあがり量の約2/3です。
湯冷ましを足しても、まだ熱い場合はあります。量は目盛りまでにして、それ以上は水を足さず、哺乳瓶の外から冷まします。
お湯でできあがり量まで作り、哺乳瓶を流水で冷やす
湯冷ましを用意しなくても、ミルクは作れます。粉を溶かしたあと、残りもお湯でできあがり量に合わせます。乳首とフードをつけて混ぜ、哺乳瓶に流水を当てるなどして冷まします。冷やす水が乳首に触れたり、瓶の中へ入ったりしないようにします。
少量のミルクで、お湯と湯冷ましを分けて量るのが難しい時にも選べる方法です。どちらの方法でも、最後は人肌に冷めていることを確かめてから飲ませます。
ミルク作りで避けたい、水とお湯の使い方
ミルクを作る時に避けたいのは、粉を溶かす時の温度と、あとから足す水に関わる、次の4つです。
- 70℃未満のお湯や、常温の水で粉を溶かすこと。
- 沸かしていない水道水を、そのままミルクに足すこと。
- 開栓から何日もたち、商品の使用期間を過ぎた水や、保存状態が分からない水を足すこと。
- 大人などが口をつけて飲んだペットボトルから、水を足すこと。
70℃ちょうどのお湯も「70℃以上」に含まれます。ただ、用意してから注ぐまでにもお湯は冷めるため、70℃ぎりぎりを狙うと、粉を溶かす時には下回っていることがあります。温度には余裕を持たせて用意しましょう。
こうした作り方をしていたことに飲ませる前に気づいたら、そのミルクは飲ませず、作り直しましょう。
もし、そのようなミルクを飲ませた場合は、飲んだ時刻や量、その時の作り方を記録して、体調に気になる変化があれば小児科に相談してください。夜間・休日の受診判断は、子ども医療電話相談「#8000」でも聞けます。相談料は無料・通話料は利用者負担で、受付時間は都道府県ごとに異なります。
次のような時は、電話相談を待たず119番へ。消防庁の救急車利用ガイドが、子どもについて「すぐに119番」としている目安の一部です。
- 呼吸が苦しそう、呼吸が弱い
- 唇が紫色、顔色が明らかに悪い
- 吐くのが止まらない
- 呼びかけても反応がない、もうろうとしている
- 生まれて3か月未満で、様子がおかしい
- そのほか、親から見て、いつもと違う・様子がおかしい
粉を溶かした時の温度が低かった場合のことは、こちらにまとめています。
毎日の手間に合わせて、用意の仕方を選ぶ
使う水が決まったら、授乳のたびにどう用意するかを考えてみましょう。
水道水を沸かして使う方法には、専用の水を買わずに済む利点があります。水筒などで保温するなら、製品の保温性能や使い方を確認します。時間がたつと冷めるため、粉を溶かす時に70℃以上あるかが大切です。
湯冷ましを作るなら、入れる容器の使いやすさや管理方法も考えることになります。容器を選ぶ時のことは、こちらの記事にまとめています。
ウォーターサーバーを検討するなら、温水の温度と調乳への使用条件に加え、費用、置き場所、給水、手入れを比較します。水道水より安全だから必要、という選び方ではなく、どの作業を減らしたいかを基準にすると考えやすくなります。
わたしがミルク作りで迷っていたのは、手順の目的が分からなかったからでした。水を沸かす時、粉を溶かす時、飲める温度に冷ます時。それぞれの理由が分かれば、何に気をつければいいのかがちゃんと見えてきます。
水道水、市販の水やウォーターサーバーなど、選択肢がいくつもあるのは悩んでしまう原因にもなります。ですが、自分が納得できるものを選ぶことで、毎日のミルク作りが続けやすいものになっていくと思います。
夜の育児の悩みを、地図のようにまとめたガイドもあります。
情報の確認に用いた参考資料
- 厚生労働省掲載・FAO/WHO調乳ガイドライン・家庭向け手順3.1.2(PDF):市販の水を含む加熱、70℃以上での調乳、授乳前の冷却。
- 明治「ミルクを溶かす水は?」:水道水、市販水、井戸水などの確認先。
- 雪印メグミルク「よくあるご質問」:調乳に使う水の硬度。
- 東京都水道局「水質に関するよくある質問」:塩素、トリハロメタン、煮沸した水の扱い。
- 環境省「水質基準項目と基準値」:水道水の硬度の基準。粉ミルクメーカーの市販水の目安とは別。
- サントリー天然水「赤ちゃんのミルクに使えますか?」:対象商品の温度調整への使用案内。
- サントリー「ミネラルウォーターの保管」:開栓後の冷蔵保存。
- 和光堂「お問い合わせ」乳幼児飲料のFAQ:「赤ちゃんの純水」の、開栓後の保存・使用期間と煮沸の案内。
- 雪印ビーンスターク「意外と知らない!?赤ちゃんのミルクのこと」:沸騰直後のお湯、流水での冷却、湯冷ましを使う方法。
- アイクレオ「よくあるご質問」:お湯と湯冷ましを使う調乳手順。
- 厚生労働省「子ども医療電話相談事業」、神奈川県の実施案内、消防庁「救急車利用ガイド」:体調・受診の相談先。
情報確認:2026年10月14日/Nicori編集室
