赤ちゃんがなぜ泣いているのか、見分けることって出来ると思いますか?

泣き声の違いや、表情・しぐさから理由を読み取る方法は、たしかにいくつも紹介されています。けれど実際の夜は、それだけではうまくいかないことも少なくありません。

今日は、あるお父さんの経験から、「赤ちゃんが泣いている理由」と、その向き合い方について一緒に考えていこうと思います。

あるお父さんの夜

「赤ちゃんの泣き方に種類があるの?」――そんなことを知ったのは、育児がだいぶ進んだ後のことでした。

記憶を辿ってみると、お腹が空いたのか、おむつなのか、ただ機嫌が悪いのか、すぐに分からず右往左往。可能性を一つずつ試して、「あぁ、これか」と最後にたどり着く、そんなことばかりでした。

寝かしつけに成功し「やれやれ」とホッとしたのも束の間、0時頃から「ギャーン!」と始まる、時折やってくる謎の夜。泣き止んだと思ったらまた泣き出し、止んでは泣きを繰り返す。寝室が熱いのかもと、肌寒い階段を登ったり降りたりしながら。落ち着いたのは朝方の4〜5時。そんな夜は、一度や二度ではありません。

眠気が限界に達し、ついイライラを表に出してしまうことも。後から「ごめんね」と謝っても、残るのは疲れと後悔だけ。

当時はある意味で「その日暮らし」。

泣いている理由・泣き方の見分け方などを、調べるような発想はなかったので、「どうしてお互いこんな大変になっちゃうんだろう…」と、頭をひねる日々でした。

そして、ふと思ったのが、「赤ちゃんの泣き」には
・がんばって解決できる理由
・がんばっても解決できない理由
このふたつがあるのでは、ということでした。

泣きの種類を、心構えの材料に

泣いている理由には、いくつかの種類があります。

方法論としても語られるような、空腹・おむつ・眠気など多数あり、技術や経験で見分けられるようになる、とも言われています。

でもわたしは、それを即座に聞き分けることを目的にしなくていい、と思っています。

大切なのは、「理由には色んな種類がある」という感覚を持っていること。

泣く可能性のある出来事を、頭の中で整理しておく。

そうすると、いざ、わが子が泣いている状況で、より想像力を働かせることができるようになります。

「お腹が空いた頃かな」「室温が上がってきたかな」「眠いのかな」などなど…——いくつかの可能性を頭の中に並べておくと、思いの外、落ち着いて対応できるものです。

育児をしていると、混乱する状況がたくさんあります。

泣いている理由を即座に導き出せなくても、「こういう可能性があるかも」と想定しておくこと自体が、親のメンタルをストレスから少し守ってくれます。

それに気づいてから、わたしの育児は少しずつ、優しいものになっていきました。

確認しておきたい、赤ちゃんが泣く10の理由

赤ちゃんが泣く理由は、いったいどれくらいあるのでしょうか。

医学事典や公的機関の情報を横断すると、よく挙げられているのは次のようなものです。

  1. 疲れ
  2. 空腹
  3. おむつなどの不快感
  4. 暑さ・寒さ
  5. 眠いのに眠れない
  6. げっぷ・お腹のガス
  7. 抱っこ・甘え
  8. 過剰刺激(日中の情報処理が追いつかない)
  9. 体調不良(発熱・痛みなど)
  10. 理由がはっきりしない泣き

並べてみると、思っていたより多くの理由があります。

この10個の理由を、「がんばって解決できる理由」と「がんばっても解決できない理由」に分けてみます。

がんばって解決できる理由

〔空腹・おむつなどの不快感・暑さ・寒さ・眠いのに眠れない・げっぷ・お腹のガス・抱っこ・甘え〕

これらの泣く理由は、育児的な行動で解決できる可能性が高いです。空腹ならミルクを、おむつが濡れていたら交換する、汗をかいていたり手足が冷えていたらエアコンや着衣を調整する、眠い時やゲップの時は抱っこや背中トントンを、抱っこ・甘えというのは少し月齢が上がった頃の欲求に感じますが、解決できます。お腹のガス、便秘などであれば、もしかしたら市販薬や小児科への相談が必要になるかもしれません。

これらの理由も、対応するには経験や慣れが必要です。ですが、どちらかと言えば、起きている原因が想像しやすいものだと思います。

がんばっても解決できない理由

〔疲れ・過剰刺激・体調不良・理由がはっきりしない泣き〕

そしてこちらは、前述したものに比べて、泣いている理由をくみ取る確かな方法がありません。疲れや過剰刺激の場合、その日いち日を振り返り「そういえば、今日のあの時、いつも以上にテンション上がっていたな」「今日は始めての場所にたくさん行ったからかな」など、正解を探しても予測を立てることまでしかできません。子どもの体調の癖や性格が分かってくると、対策なども考えられることも可能ですが、正直かなり難しいと感じます。体調不良も専門家ではない私たちにはできることは限られますし、「理由のはっきりしない泣き」と言われているものまである始末。笑

「わからない」を受け入れてみる

しかも、これらは大枠の理由です。たとえば「疲れ」と一言で言っても、その下には、身体の疲労、刺激の処理疲れ、気圧の変化への反応、新月や満月の日の敏感さ……と、細かい理由が無限に枝分かれしていきます。

全部を完全に理解できる時は、たぶん来ません。

でも、この「わからないこと」はダメなことではありません。

ある意味で、それを諦めることが必要なのかもしれません。「全ての理由を突き止める」のではなく、「わからないこともある」と受け止めること。それが、泣いている赤ちゃんを受け止める姿勢に、少しずつ繋がっていくのだと思います。

医学事典のなかでの「大泣き」

夜中に急に泣き出して、ぜんぜん泣き止まない…うちの子どうしちゃったんだろう。

そんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。

医学事典をみると、上記のような大泣き状態はそんなに珍しいことではないようです。

泣くのは、正常な発達の一部

啼泣は正常な発達の一部であり、生後3ヶ月間に最も顕著にみられる(MSDマニュアル家庭版より)

医学的な言葉で、赤ちゃんが泣くことを「啼泣(ていきゅう)」と呼びます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、ここでは「泣く」と置き換えて読んでいただいて構いません。

世界標準の医学事典のなかでは、「赤ちゃんが泣く」のは異常ではなく、正常な成長の過程である、と記載されているのです。

過度に泣いても、95%以上は病気ではない

過度の啼泣の95%以上の割合で、原因となる具体的な病気はみられない(MSDマニュアル家庭版より)

「過度の啼泣」というのは、先ほど例に上げた大泣き状態のことです。いつもより長く続く泣きや、なだめても止まらない泣きのことです。たとえそれが続いていても、そのほとんどは病気が原因ではない、と医学事典は言っています。

このことを知っているか、知らないかで、育児中のメンタルへ与える影響は大きいのではないでしょうか。

原因が分からないのは、医学の世界でも同じ

意外なことに、赤ちゃんが泣き続ける現象は、医療研究の世界でも解明が終わっていません。

つまり、ただの親である私たちが困惑するのは当然のことなのです。

先ほど上げた、「理由の分からない泣きがある」というのはまさに、文字通りなんです。

「理解できない私がわるいのかな…」そんなことは微塵もないので、安心してください。

泣いている理由は赤ちゃん自身の中にあり、その理由はもちろん泣いている本人にも分からないんです。

——そんな時には、そっと手を添えたり、傍にいてあげるだけで充分なのかもしれません。

「PURPLE Crying」という言葉を知っていますか

「理由のない泣き」と言われる現象には、実はいくつかの名前が付けられています。

中でも近年、世界的に広まっているのが「パープル・クライング」(PURPLE Crying)という考え方です。米国の発達小児科医、Ronald G. Barr博士が提唱した概念で、揺さぶられっ子症候群(=赤ちゃんを揺さぶることで起こる脳の損傷)を予防する目的で、世界中に広まっていきました。

「PURPLE」は、6つの特徴の頭文字を取ったものです。

  • 生後2ヶ月頃にピークを迎える
  • 理由がわからず始まり、止まる
  • あやしても泣き止まない
  • 痛がるような表情をするが、実際は痛くない
  • 1日5時間以上続くこともある
  • 夕方〜夜に多い

米国では、新生児家庭の約80%にPURPLE Cryingの教材が配布されているといわれています。

一方、日本では「黄昏泣き(たそがれなき)」「コリック」という呼び方の方が、聞いたことがある人も多いかもしれません。コリックは医学的には「仙痛(せんつう)」とも呼ばれ、生後4ヶ月以下の赤ちゃんに、はっきりとした原因なく、3週間以上、1日3時間以上、週3日以上続く泣きのことを指します。

呼び方は違えど、これらは同じ現象を指しています。

共通しているのは、いずれも「正常な発達の一段階」として位置付けられていること。原因はまだ完全には解明されていませんが、生後5〜6ヶ月頃には自然に治まっていくと言われています。

「うちの子だけがこんなに泣くのかな」と感じている方へ

世界中で、同じように泣いている赤ちゃんと、同じように悩んでいる親がいます。

「うちの子に何かあるんじゃないか」と感じてしまう夜があっても、それはあなただけが体験していることではありません。

同じ夜を過ごしている家族が世界中にいることを、忘れないでください。

聞き分けるより、観察するという関わり方

前述したような、泣き声から瞬時にその意味を読み取って解決するスキル。

——できたらいいですが、そう簡単にできることではありません。

では、どんな意識で向き合ってあげたらいいのでしょうか?

親身に観察するという選択

聞き分ける、は難しいかもしれませんが、「観察する」ならどうでしょう?

観察といっても、記録を付けるわけではないし、ただじっと見つめるわけでもありません。

  • どんな時間帯に泣くことが多いか
  • 泣く前に何があったか
  • 体の動きや表情はどうか
  • 室温や湿度はどうだったか

自分の記憶の中に、こんな手がかりを少しずつ集めていくような作業です。

もっと見てほしいのが、「こちらが何かをしたとき、赤ちゃんがどう反応するか」

これも観察のひとつです。

声をかけてみる。少し抱き方を変えてみる。鼻歌を歌ってみる。その時に、赤ちゃんの表情や体の力の入り方が、ふっと変わる瞬間があるはずです。

続けていくうちに、「これはもう少しで眠る状態だな」とか「この声の出し方は安心するみたいだな」と、自分と赤ちゃんのパターンが少しずつ見えてきます。

マニュアルの正解ではなく、自分たちの選択肢が育っていきます。

「理由のない大泣き」の時の選択肢

これらは、理由のない大泣きの場合に、とても重要になります。

「こうしたら、だいたい泣き止んでくれるはず」という方向性を知っていると、それが効果を出さない時、「あ、これは見守るしかできることがない泣きなんだ…」と判断することができます。

諦めといえばそうなのですが、隣で見守ってあげる、という選択肢を出せることは、お互いにとって良いことだと思います。

観察と一緒にできる、毎日の小さなこと

観察と一緒に、毎日できる小さな積み重ねがあります。

名前を呼ぶ。リラックスした声で鼻歌を歌う。笑顔で視界に入る。

それだけで、赤ちゃんの安心感は、少しずつ育っていきます。

わたしも父親として、最初は泣き声の意味がぜんぜんわかりませんでした。でも、毎日観察を続けるうちに、少しずつわかるようになってきました。これは性別に関係なく、関わる時間が育ててくれる感覚なのだと思います。

「見守る」ということの意味

「ただ見守るだなんて、それにどんな意味があるの?」と思うかもしれません。

わたしがそれに行き着いた理由と、具体的なアクションを少しだけお伝えします。

そもそも、赤ちゃんはなぜ泣くの?

少しだけ生き物の本能の話をします。

赤ちゃんが泣くのは、生物の生存本能として、助けてくれる誰かに来てほしいというサインだといわれています。

母のお腹という、安心できた世界から、知らない温度、知らない音、知らない感触の場所へ放り出された——そう考えると、新生児が泣くのは、ごく自然なことに感じませんか?

もしも自分が、幼い精神でそんな状況に置かれたら、きっと同じように泣きじゃくるんじゃないかな、と想像できます。

そう思えるようになってから、わたしは赤ちゃんの泣き声を「困らせるもの」ではなく、「不安を伝えてくれているもの」として受け取れるようになりました。

アクション:受け止めて、ゆったり返す

泣いている声のリズムや響きを、まずはちゃんと受け止めてあげることから始めましょう。

その上で、そのニュアンスより少しだけゆったりした声で、鼻歌を歌ってあげる。

鼻歌を歌いながら、自分も段々とリラックスするような感覚を探してください。

そうしているうちに、赤ちゃんの泣き声が、徐々に落ち着いた響きへと変化していくことがあります。

夜泣きでぐずりそうな時、すっと隣に寝転び、落ち着いた手を添えてあげる。落ち着いた鼻歌を聞かせてあげる。それだけで、安心して寝てくれることも、多くありました。

どうしてもやまない、大泣きの夜には

それでも、泣きやまない夜はやってきます。

そんな時は、無理に泣きやませるアクションをしなくて大丈夫です。

極々小さな鼻歌、ゆったりとした抱っこなど、さりげない「いるよ」アピール。それだけで充分です。

「何もできていない」と感じてしまうかもしれません。

でもこれは、何もしていないわけではありません。

その時に大切なのは、できるだけ親自身の心を穏やかに保つことです。

「泣きたい夜もあるよね」——そんな優しい気持ちは、ふしぎと、赤ちゃんにも伝わります。

どうしても何かしてあげたい…そう思ったら、「見守ることをしっかり頑張る」を試してみてください。

離れてもいい、育児のための選択

どんなに頑張り屋でも、人には限界があります。

「もうどうしたらいいかわからない」「自分が壊れそう」——そう感じてしまう夜が来る前に、知っておいてほしいことがあります。

親に「離れていい」と伝えている医学事典

世界標準の医学事典には、こんな言葉が書かれています。

親がいらだちを感じている場合は、泣いている子どもから離れて休憩するか、子どもを数分間安全な場所にいさせるようにします。そのような方法は、親が事態に対処し虐待を抑える助けになります(MSDマニュアル家庭版より)

日本でも、こども家庭庁が同じことを伝えています。

いろいろ試して、それでも泣きやまなくても問題ありません
赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、その場を離れて、自分がリラックスしましょう(出典:こども家庭庁)

赤ちゃんから少しだけ距離を置いて休むことは、医学が認めている、親の選択肢のひとつです。

がんばっているあなたに、伝えたいこと

「見守っていい」と気付くまで、わたしにも、どうしようもない大泣きを一晩中抱っこしていた記憶があります。

あの時、この「離れていい」を知っていたら、もう少し肩の力を抜けたかもしれません。

安全な場所に寝かせて、隣の部屋で深呼吸をする数分間が、その夜のあなたと赤ちゃんの両方を守ることに繋がります。

限界を感じる前に、頼ってほしい場所

自分一人、家族だけで抱え込まなくて大丈夫です。

困った時に頼れる相談先を、いくつか紹介します。

  • #8000(子ども医療電話相談)——夜間や休日に、赤ちゃんの様子で迷った時に相談できます
  • お住まいの地域の保健センター——育児全般の相談、家庭訪問など、継続的に支えてくれる場所
  • よりそいホットライン(0120-279-338)——親自身の心がつらい時に、24時間話を聞いてくれる窓口

助けを求めることは、弱さではありません。

あなたと赤ちゃんを守るための、勇気ある選択です。

まとめ

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

「赤ちゃんの泣き方に種類はある?」——そんな問いから始まったこの記事で、お父さんの体験と気付きを通して、いくつものことを一緒に考えてきました。

この記事を一緒にたどってきたこと

  • 泣き方の種類はあるけれど、即座に聞き分けることを目的にしなくていい
  • 大泣きの95%以上は病気ではなく、世界中に同じ夜を過ごしている家族がいる
  • 聞き分けるより、観察すること
  • 観察してもわからない夜は、見守ること
  • そして、限界の前に、離れていいこと

Nicori編集室が、この記事を通して伝えたかったのは、ただひとつ。

「わからない」も「できない」も、悪いことではない。

赤ちゃんに種類別の正解を出してあげることより、傍らにいて、観察と見守りを続けてあげること。それだけで、充分すぎるほどに、親としての役割を果たしています。

もし明日、また泣き止まない夜が来たら——

深呼吸をひとつして、まずは笑顔で傍にいてあげてください。

笑顔と、優しい声。
それが、わたしたちが赤ちゃんにあげられる、いちばんあたたかな贈り物だと思います。

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Nicori編集室