育児に取り組んでいるパパやママの中には、
粉ミルクの作り方をネットで調べたことがある方も多いのではないでしょうか。

一般的な作り方を検索すると、だいたい同じような方法が紹介されていますよね。
多くの粉ミルクメーカーや育児情報サイトでは、
WHOや厚生労働省が示している考え方を参考にした作り方が紹介されています。

その中でよく目にするのが、
100℃(沸騰)と70℃以上という、ふたつの温度です。

このふたつの温度を見て、
「その温度にする理由ってなんだろう?」
「少しでも間違ったらダメなのかな?」
そんな疑問を感じたことはありませんか。

正直なところ、わたし自身はこの小さな疑問がずっと頭の片隅にあって、
粉ミルク作りに100%の自信を持てずにいました。

もし今、少しでも同じような引っかかりを感じているようなら、
この記事が“考えるための材料”になれば嬉しいです。

実はちゃんと知らない、ミルクを作る時の「お湯の温度」の理由

粉ミルクの作り方を調べると、下記のような説明を目にすることが多いと思います。

  • 一度沸騰させたお湯を、70℃以上で粉ミルクに注ぐ
  • 水をしっかり沸騰させてから、70℃を下回らないように調乳する
  • 沸騰させたお湯を、少し冷まして使う
  • 水を数分沸騰させてから使用する

サイトによって表現の違いはありますが、
多くの説明に共通しているのは、

水はしっかり沸騰させること

粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かすこと

という2点です。

ただ、実際に調べてみると

「何分間沸騰させるのか」
「70℃以上をどの程度意識するのか」

といった細かい部分については、
幅を持たせた書き方をしている情報が多いように感じます。

この「レシピのゆとり」ともいえる幅の部分が、当時のわたしには「迷うポイント」になっていたのです。

・赤ちゃんにミルクを与える前に「授乳できる温度まで冷やす」とあるが、それは別の記事で説明する(記事リンク有り)

迷いの多かった、私のミルク育児


水を沸騰させる、ということは理解できるのですが、
それにどんな目的があるのかを明確に知りませんでした。

そのため、
「もしかして、もっと長時間沸騰させ続ける必要があるのかな?」
と不安になったり、
「沸騰直後に哺乳瓶に注いだらダメなんだっけ?もう少し冷めてから?」
と、深夜に悩んでしまうこともありました。

「電気ポット使ってるけど、これってしっかり沸騰させたことになるの?」
など、
正直ずっと、そんなことを考えながらミルクを作っていた気がします。笑

迷っていたのは、温度の目的を知らなかったから


その疑問が消えなかったのは、
「その温度で何をしたいのか」
それをちゃんと知らなかったからでした。

例えるなら、
上司から「これをして」と漠然と依頼された仕事のようで、
「言われた通りやったつもりだけど、本当に正しく出来ているのかな、、、?」
と、不安になる時と似ています。笑

その目的と理由を深堀って調べてみると、なるほど、「行動の幅」というものがなんとなく見えてきました。

「こんな効果を出すためにやっている」を知ることで、
「それならこの程度やったらきっと大丈夫だろう」と判断するための、
指針になってくれました。

水を沸騰(100℃)させるのは何のため?

まずはひとつめの温度についてです。 厳密には条件によって異なりますが、ここでは分かりやすさのために「沸騰=100℃」として説明します。

日本の水道水の高い安全性

日本の水道水は水道法に基づいて厳しく管理されており、長期的に飲み続けても健康に影響が出ない水準で提供されています。

そのうえで、粉ミルク作りでは「一度煮沸する」という工程が紹介されています。
これは水が危険だからというよりも、
より納得して使える状態に整える、と考えると分かりやすいかもしれません。

もしもに備えるための加熱

日本の水道水は安全基準を満たしていますが、家庭内での取り扱い(蛇口まわりや保存容器など)の状況によっては、わずかな再汚染が起こる可能性もゼロではありません。

水を沸騰させることで、その可能性をさらに下げることができます。
その意味で、これは「もしもに備えるための加熱」とも言えるでしょう。

産まれたばかりの赤ちゃんは免疫機能が未熟とされているので、色々なことが心配になってしまう方も多いでしょう。
こうした工程を知っておくことで、気持ちの面でも納得しやすくなるかもしれません。

この沸騰させる工程は、後述する「粉ミルクを70℃以上のお湯で溶かす」という基本的な手順にも繋がっています。

残留塩素やトリハロメタンの低減という側面

水道水に含まれる残留塩素やトリハロメタンは、心配の声として上がることが多い成分です。
このふたつはいずれも基準値内で管理されており、健康に影響のない範囲とされています。

一方で、煮沸を行うことでこれらの成分の減少が確認されている、という報告もあります。
より納得して水道水を使いたいと考える方には、3〜5分程度の煮沸が安心材料のひとつになるでしょう。

育児の手間や心配事を減らしたい、と考える方は「赤ちゃん用の純水」などの製品を選ぶという方法もあります。

それぞれの家庭の状況に合わせて、無理のない方法を選べるとよいでしょう。

親自身の安心に繋がる

赤ちゃんのための行動は、裏を返せば、親自身のための行動とも言えます。
成長の過程で、赤ちゃんの体調不良は必ずといっていいほど起こります。
そんな時に、
「他にできることがあったのでは」
「あの時にこれをしなかったからかもしれない」
と、自分を責めてしまう親御さんも少なくありません。

だからこそ、気になっていることがあれば、無理のない範囲で取り入れてみるのもひとつの選択です。
そうした積み重ねが、後から振り返ったときに自分を支えてくれることもあるかもしれません。

育児には防ぎようのないことがたくさんあります。
「必要以上に自分を責めすぎない」というのも、とても大切なことです。

粉ミルクを70℃以上で作る理由

ミルク作りで迷ってしまった理由のひとつが「70℃以上」という言葉でした。この温度が持つ意味について、順番に整理していきたいと思います。

なぜ70℃以上のお湯が推奨されているのか

厚生労働省などの資料では、粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かすことが推奨されています。
多くの粉ミルクメーカーの手順でも、同様の方法が示されています。
これは衛生管理上の理由によるものです。

この「70℃以上」という指定を、不思議に感じたことはありませんか?
私は最初、こう考えていました。

「沸騰させたんだから、当然70℃以上だよね」

しかし調乳方法には、「沸騰したお湯をそのまま使う」とは書かれていません。
そうなると、次の疑問が出てきます。

  • 沸騰したばかりのお湯は使わない方がいいの?
  • 70℃に近い温度にした方がいいのかな?
  • それとも90℃くらいでも問題ないの?

調べてみると、この「70℃以上」と書かれているのには、きちんとした理由がありました。

粉ミルクの安全性と、温度管理が必要になる理由

粉ミルクは安全。でも完全な無菌ではない

粉ミルクは製造の過程で高度な衛生管理が行われており、乳幼児食品として高い安全基準が保たれています。

メーカーのホームページでも、こうした品質管理の方法を紹介している例が多く見られます。
ただし、粉ミルクは製造の過程で完全な無菌状態にすることが難しいとされています。
また、開封後は家庭で保存することになるため、空気や器具などから菌が入る可能性も想定しておく必要があります。

こうした理由から、調乳時のお湯の温度管理が必要とされています。

想定される菌と、調乳に70℃以上のお湯を使う理由

WHOなどの注意喚起にでてくる菌で代表的なものは、サカザキ菌とサルモネラ菌です。

サカザキ菌は自然界に広く存在する菌で、製造過程で混入をゼロにすることは難しいとされています。
また、サルモネラ菌についても、調乳時の環境や器具を通して混入する可能性があるとされています。

これらのリスクに対応できるのが、70℃以上のお湯です。
WHOが提供する情報によると、サカザキ菌およびサルモネラ菌は70℃以上のお湯を使うことで不活性化(死滅)が進み、感染のリスクが激減すると示されています。
厚生労働省の資料でも、同様の内容が示されています。

(参考:厚生労働省「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドラインについて」)

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/070604-1.html

なぜ「沸騰させたお湯」ではなく「70℃以上」とされているのか

粉ミルクの調乳に関して、WHOのガイドラインでは

『やけどに注意しながら、洗浄・殺菌した哺乳ビンに 正確な量の沸かした湯を注ぎます。湯は70℃以上 に保ち、沸かしてから30分以上放置しないようにします。』
とあります。

「湯は70℃以上に保ち」の部分が大切で、哺乳瓶にそそぎ粉ミルクと混ざることでお湯の温度が低下することを考慮しないといけないのです。
哺乳瓶が冷えすぎていたり、そそぐ湯量が少なすぎると、粉ミルクを溶かしている途中でお湯の温度が下がってしまいます。

50〜60℃では菌の不活性化が足りない可能性があります。
そのため、80〜90℃程度の高温のお湯を使うことで、温度が下がった場合でも70℃以上を保ちやすくなります。

安全性の話からはすこし逸れますが、
高温によりビタミンなどの栄養素が破壊されるという話もあります。
多くの粉ミルクメーカーではそれを考慮して栄養設計がされているようなので、
そのれを気にして、わざわざお湯の温度を下げる必要はないでしょう。

粉ミルクの作り方に出てくる「70℃以上」という記載は、安全管理の最低ラインと考えられます。
70℃以上に保てているか不安になってしまう時は、
しっかり熱いと感じる温度で調乳する方が、安心して準備できると思います。

100℃と70℃の違いと、それぞれの役割

ここで一度、「100℃(沸騰)」と「70℃以上」の温度が持つ役割を整理してみましょう。

違う目的を持ったふたつの温度

ミルク作りで迷いがうまれるのは、「100℃と70℃、どちらの温度を優先したらいいのか」という勘違いからでした。

ですが、このふたつの温度は、どちらかを選ぶかというものではなく、それぞれ異なる目的を持った工程だと考えるとわかりやすくなります。

[ボックス利用]

100℃(沸騰)にする目的:水そのものをより安全な状態にするため

70℃以上にする目的:粉ミルクに含まれる可能性のある菌のリスクを下げるため

「沸騰させる」という工程のすぐ後に「70℃以上のお湯で溶かす」と記載されているサイトが多いので、混乱してしまう人がいるのかもしれません。

ですが、

『ふたつの温度は別の目的を持っているので、両方の条件を満たせば良い』と考えれば、

迷わず安心してミルクを準備できるようになります。

ミルク作りで迷わないための、シンプルな流れ

実際のミルク作りは、このふたつの温度をひとつの流れの中で扱っていきます。

まずは水を火に掛けるか、電気ポットのスイッチを入れ、しっかり沸騰させたお湯を用意します。

沸かしている間に、粉ミルクの分量を測って哺乳瓶に入れると効率的です。

グツグツとした沸騰が落ち着いたタイミングで調乳を始めれば、

「70℃以上で調乳する」という条件も満たせます。

お湯の温度が高いので、火傷には注意してください。

このように、基本の流れを押さえておけば、無理なく準備できるようになっています。

夜間ミルクなど自分自身に余裕が少ないときには、細かい温度を気にするよりも、

「沸騰させたお湯が落ち着いたタイミングで調乳する」くらいのシンプルな考え方のほうが、準備しやすくなります。

必要なポイントを押さえておけば、調乳のたびに不安に思う必要はありません。

無理のない方法で、落ち着いて準備することが大切です。

この後の工程となる、ミルクの温度調整に自信がない方は、

【赤ちゃんのミルク温度はなぜ「人肌」】の記事も参考にしてみてください。

ミルクの温度、いつまで気にしたらいい?

ガイドラインによるミルクを溶かす温度は、生後12ヶ月まで

WHO/FAOガイドラインによれば、生後12ヶ月までは定められた粉ミルクの作り方を推奨しています。

新生児〜生後2ヶ月はもっとも感染リスクが高い時期だと言われています。

粉ミルクの調乳時には、特にお湯の温度に気を配りましょう。

生後2ヶ月を過ぎてくると徐々に免疫機能が発達してきます。

段階的にリスクが低下していく傾向にはあるようですが、生後12ヶ月まではガイドラインで推奨された温度で調乳するのが安心です。

ここまでくれば、ミルク作りは楽になっていきます。

具体的には、離乳食が進みフォローアップミルクを使い始めるタイミングです。

ちょっと楽になる、フォローアップミルク

生後9ヶ月頃から、フォーローアップミルクの利用も推奨されています。

※フォローアップミルクに関して、より詳しく知りたい方は、この記事も参考にしてください。

(記事公開予定)

離乳食の後期、1日3回くらいが安定してきた頃に、フォーローアップミルクの利用がすすめられています。

その頃には、免疫機能が安定してきていると考えられているため、フォローアップミルクの製品には「高温のお湯で溶かす」などの指示は書かれていません。

フォローアップミルクの作り方に関しては、メーカーに寄って様々です。

「水でも溶かせる」「50℃くらいのお湯が溶かしやすい」という記載が目立ちます。

つまり、乳幼児ミルクのような「70℃以上のお湯で溶かさなければいけない」という決まりはないようです。

なので、朝作った湯冷ましを使うなど、手間を少なくして作ることができます。

新生児から頑張ってきたお湯の温度管理から、解放されるタイミングがやってきます。

家庭それぞれ、育児の進行具合で温度を守る

前述した通り、離乳食の進み具合などによってミルク温度にこだわる期間が変わっていきます。

市町村によっては、生後5ヶ月程度から離乳食をすすめている所もありますし、1歳を過ぎてからの離乳食をすすめている育児本もあります。

育児には決まった正解がない、というのはみなさんも感じていることだと思います。

育てているお子さんの個性も重要ですし、ご家庭によっては早めに卒乳させたい、などの希望もあるでしょう。

焦ることなく離乳食をすすめて、1日3回の離乳食を安定させる

乳幼児ミルクから、フォローアップミルクに移行する

急に温度管理を無くすのが不安なら、少しづつお湯の温度へのこだわりを減らしていく

赤ちゃんの体調の変化などを確認しながら、気持ち的に無理のない、ご家庭にあった方法で進めていけたら良いと思います。

まとめ

この記事では、粉ミルクを作るときに出てくる「ふたつの温度」について、その理由を一緒に整理してきました。

最後に、大切なポイントをシンプルに振り返っておきましょう。

ふたつの温度の目的

【ボックス】

  • 水を沸騰(100℃)させるのは → 水をより安全な状態に整えるため
  • 70℃以上のお湯で溶かすのは → 粉ミルクに含まれる可能性のある菌のリスクを下げるため

このふたつの温度は「どちらかを選ぶ」ものではなく、それぞれの工程で異なる目的を持っています。
両方の条件を満たしていれば、ミルク作りの温度は合格。

温度管理にこだわる期間

温度管理が必要な期間については、生後12ヶ月までが目安とされています。
新生児〜生後2ヶ月はもっとも注意が必要な時期ですが、成長とともに免疫機能が発達し、離乳食が進んでフォローアップミルクに移行するタイミングで、温度へのこだわりも少しずつ手放していけます。

今、深夜のミルク作りでしんどさを感じていたとしても、 その期間にはおわりがやってきます。

さいごに

なんとなく不安だったミルク作りが、「温度の意味」を知ることで、少し落ち着いて向き合えるものに変わっていけば嬉しいです。

ポイントを押さえて、落ち着いて準備できていれば、それで十分です。

ミルクを溶かした後の「冷まし方」が気になる方は、次の記事も参考にしてみてください。

👉【赤ちゃんのミルク温度はなぜ「人肌」?】冷まし方と温度の確認方法