新生児との遊び方|顔・声・ふれあいから、安心を重ねる
生まれたばかりの子と、何をして過ごせばいいのか思い浮かばない。「ちょっと遊んでおいて」と言われて、戸惑ったことのある人もいると思います。
子どもと自然に遊べるのは、ある種の才能です。得意な人には何でもない「遊ぶこと」も、苦手な人には、もう少し具体的な言葉が必要です。
新生児との関わりに、こんな四つの動作があります。
- 視界の中で、手や物をゆっくり動かす
- 顔を近づけ、声と表情で関わる
- 手や足に触れ、身体を撫でる
- 手や腕をそっと支えて、小さく動かす
この記事では、生後28日未満の新生児との関わりを扱います。何をするかとともに、その小さな関わりの中で、わたしたちが何を届けられるのかもお話しします。
「遊んで」を、四つの動作にしてみる
「遊ぶ」がイメージしにくければ、「感覚を刺激してあげる」と言い換えると、少し分かりやすくなります。見えるもの、聞こえる声、触れられた感覚。わたしたちにとって身近なことの中にも、赤ちゃんにとって新しい体験がたくさんあります。
どれから始めてもかまいません。赤ちゃんの様子を見て、その時にできそうなことを選んでみてください。
視界の中で、手や物をゆっくり動かしてみる
赤ちゃんの見える位置に自分の手を見せ、ゆっくり動かしてみる。それだけでも、遊びの一つになります。
新生児は光や形、近くの顔、動きを捉えられる一方で、遠くはぼんやりとしか見えないと言われています。(米国小児科学会AAPより)
見えやすい距離の目安は20〜30cmで、胸に抱えて顔を寄せると、だいたいこの程度の距離になるでしょう。
なので、遠すぎない距離でゆっくりと、手をグーパーしたり、指を動かしたりする。ぬいぐるみを動かすのも良いですね。見ることに不慣れな赤ちゃんでも、「何かが動いている」と感じられるよう心がけてみましょう。
顔を近づけ、声と表情で関わる
顔を近づけて、名前を呼んでみる。話しながら微笑んだり、口元の表情を変えたりする。声を聞かせる時は、顔も一緒に向けてみてはどうでしょう。
掛ける言葉が浮かばない時は、名前を呼ぶだけでも大丈夫です。言葉の代わりに、子守唄や鼻唄をうたうのも良い体験になると思います。この時、上手に話すことや、ちゃんと歌詞をなぞる必要はありません。「顔を見ながら声を届ける」ということが、感覚への刺激になります。
手や足に触れ、身体を撫でる
小さな手や足にそっと触れたり、身体を優しく撫でたりする。「ちいさな手だねー」「かわいいねー」など声を添えながら、触覚と聴覚に働きかける。表情や、身体の様子をみながら、丁寧に触ってあげてください。
おむつを替える時に「きれいになったねー」「すっきりしたねー」と声をかける。身体に触れながら言葉を掛けるお世話は、声の響きや言葉に触れる経験にもなります。言葉の意味がすぐに分からなくても、日々のこうしたやり取りが、言葉を覚えていく土台になっていきます。
お世話の時間と遊ぶ時間を、新生児の赤ちゃんは区別しているわけではないと思います。日常のお世話も含めて、親子が向き合っている時間になるのです。
手や腕をそっと支えて、小さく動かす
手に触れることから始め、そっと握って、少し腕を動かしてみる。手を顔の前まで上げるとか、手と手を合わせるなど、赤ちゃんに無理をさせないように、極々小さな動きにしましょう。
体操やスポーツのように、大きく動かすことを目指すものではありません。赤ちゃんが嫌がっている様子なら止めて、そっとしておいてあげましょう。
いかがでしょうか?「遊んで」だけでは見えなかったことも、具体的な行動にすると、自分にできそうな関わりが見えてきます。
起きている時間をどう過ごすかは、日々のお世話の場面から、こちらで詳しくお話ししています。
いちばん渡したいのは、守ってくれる人がいる安心感
「うまくできたら喜ぶ」という、大人の期待
顔を見せる、声をかける、身体に触れる。色々とお世話をしていくと、今度は「これで喜んでくれるかな」と、良い反応や変化を期待してしまいます。
うまく抱けば泣き止む。うまく遊べば喜ぶ。自分の行動が、目に見える成果を生むはずだと考えてしまうのです。
でも生まれたばかりの新生児には、その大人の感覚は当てはまらない、と考えたほうがいいかもしれません。
あやすと笑い返してくれるような反応は、生後2ヶ月頃から見られることが多く、時期には個人差があります。
新生児が伝えてくれるのは、主に「お腹がすいた」「落ち着かない」といった、生きるために必要な事柄です。この時期は、声かけや動作への反応も、小さくて気づきにくいことがあります。
はっきりした変化を期待していると、その小さな反応を見逃してしまいます。泣きやまなかった時に「遊び方が下手だった」と結論づける前に、新生児のそんな状態を想像してみてください。
安心できるまでの時間を、そばで支える
そう考えると、新生児にまず渡してあげたいのは、「守ってくれる者がいる安心感」ではないでしょうか。
お腹がすいたら、母乳やミルクを飲ませてもらえる。おむつが汚れたら、きれいにしてもらえる。抱っこをして、顔を見ながら声をかけてくれる人がいる。こうした積み重ねが、生きていくことに対しての安心感につながっていきます。
抱き寄せたり、話しかけたりして落ち着けるように関わることは、赤ちゃんの安心感を支える方法として案内されています。(英国の公的医療サービスNHSより)
先ほど挙げた、顔を見せる・声をかける・身体に触れる、というのはまさに、赤ちゃんに安心感を渡せる行動のひとつなのです。
生命の危機を感じながら、何かに好奇心を持つ。そんなことは大人でも難しいと思います。身を守ることで精いっぱいの時には、周りをゆっくり見たり、新しいものに興味を向けたりする余裕は持ちにくいですよね。
赤ちゃんが落ち着いて、周りを見たり、声を聞いたりできるようにしたい。そのためにまず、安心して過ごせるよう支えてあげる。抱っこや声かけ、身体に触れるお世話は、安心感を育みながら、五感にも自然と働きかけることができるのです。
新生児と関わる時の心構えとして、わたしは「対峙すること」「存在を確かめ合うこと」という表現が合うと感じています。赤ちゃんの顔を見て、声をかけ、触れながら様子を受け取る。たとえ向こうからの反応が少なかったとしても、目の前にいる一人の相手と、誠実に向き合っていきます。
目の前で動く手、近くから聞こえる声、撫でられる感覚。そのいちばん身近な感覚を経て、赤ちゃんは、それ以外のものにも少しずつ触れていきます。わたしたちはその様子を、そばで見守っていくのです。
だんだんと、その子なりに世界を知っていく、純粋な成長をそばで支える。それが、新生児と関わることの本質なのではないでしょうか。
安心感が、その先の親子の関係にどうつながっていくのか。もう少し詳しい考え方は、こちらにも書いています。
小さな反応を、「そうかもしれない」と受け取る
目で物を追うようになる時期も、声や表情に変化が現れるようになるのも、赤ちゃんによって違います。新生児期にも反応は大小ありますが、その意味が、わたしたちに分かりやすく伝わるとは限りません。
ここで少し、「限りなく浅い眠りの時」を想像してみてください。これは新生児の状態を正確に説明する話ではありませんが、赤ちゃんの側を想像するための、わたしなりの例え話です。
うとうとしていて、夢なのか現実なのか、はっきりしない。目を閉じていても、そばに誰かがいて、何かを話している声は聞こえる。頭を撫でられている感覚もあって、自分を見守ってくれていると感じる。
そういう時は、こちらからはっきり意思を伝えることはできなくても、話している内容や温度感、触れられた感覚などは、しっかり届いていることがあると思います。
この例え話が新生児に当てはまるか、根拠はありません。ただ、大きな反応が返ってこない時にも、こちらの声や手のぬくもりを感じているかもしれない。そう考えると、目の前の赤ちゃんとの関わり方が、より大切に感じてきませんか?
新生児の娘と過ごしていた時、わたしは「あ、なんだか安心してきたかも」「もしかしたら、声に興味を持ってくれているかもな」と感じることがありました。身体のこわばりや表情の雰囲気、言ってしまえば「空気感」から受け取っていました。
これも、一種のコミュニケーションだと思います。お世話を続けていく中で、「こういう時は、こんな様子になるんだな」と、少しずつ気づくことが増えていく。
最初から全ての気持ちを汲み取れなくても、「こう感じているのかも」と考えながら接してみる。そうした積み重ねで、わが子のことを少しずつ理解していけるのだと思います。
そのうちに赤ちゃんも成長して、より分かりやすく反応を返すようになっていきます。生後2ヶ月頃になると、個人差はありますが、話しかけた声に声を返したり、表情を変えたりする子も出てきます。そうしたら今度は、こちらも声と表情で返してみてください。
声と表情の返し方や、子守唄のうたい出し方は、こちらでお話ししています。
始める時も、離れる時も、一言を添える
名前を呼んで、自分も名乗ってみる
遊びを始める時や終わる時にも、赤ちゃんに言葉をかけてみてください。わたしがおすすめしたいのは、新生児にも、人としてのコミュニケーションを取ることです。
まずは赤ちゃんの名前を呼んで、自分も名乗ってみる。「とうさんだよ」「かあさんだよ」と顔を見せ、「抱っこしようね」と伝えてから抱き上げる。こんなふうに、自分がすることに一言添えてみてはどうでしょう。
言葉を理解できなくてもいいんです。目の前の赤ちゃんに向けて言葉をちゃんと届けることを大切にしたいのです。言葉で説明して、自分の意思を伝える。そんな習慣に新生児の時から取り組む。それには大きな意味があると、わたしは考えています。
「嫌がっていないかな」と考え、終わりにも声をかける
抱っこをする、鼻唄をうたう、おもちゃを見せる。何をする時にも、「嫌がっていないかな」と相手のことを考える。顔や身体の様子を見ながら、続けるか、止めるかを選んでみましょう。
あくびをしたり、目を閉じたりしていたら、いったん手を止めてみる。こうした様子は、ひと休みが必要かを考える手掛かりになります。(NHSより)
声をかけるペースを緩めたり、遊びを切り上げたりして、その時の赤ちゃんに合わせていきましょう。
泣き始めた時も、遊びはいったん止めます。お腹がすいていないか、おむつが汚れていないかを見ながら、必要なお世話を考える。もちろん、眠たいだけの時もあります。
泣き声だけで理由が分からない時には、時間帯や前後の出来事も一緒に見てみてください。
泣き方の聞き分けに迷う時の考え方は、こちらで詳しくお話ししています。
赤ちゃんの近くを離れる時には、「またね」と一言伝える。遊び始める時と同じように、終わる時にも、コミュニケーションとして声をかけてみてください。
眠る時は、赤ちゃん用の硬く平坦な寝床に、あおむけで寝かせます。安全のためにも、遊びに使ったぬいぐるみなどは片づけて、寝床の周りに柔らかい物を置かないようにします。(こども家庭庁の案内より)
静かに寝転がっている時には、あえてそっとしておくのも一つの関わり方です。目の届く範囲で様子を確かめながら、自分のことを行う時間や、休息として有効に使いましょう。
静かに起きている時の過ごし方は、こちらで詳しくお話ししています。
今日の声かけが、これからの親子の土台になる
こうした声かけの習慣は、新生児の今だけでなく、これからの親子の関係にもつながると考えています。子に向かって言葉で伝えることを重ねると、親にとっても、丁寧にコミュニケーションを取る土台になるからです。
大人同士なら、丁寧に説明して伝えることも、「自分の子どもだから」と、つい雑な言葉かけになってしまうことがあると思います。これはわたし自身、今でも気に留めているところです。
言葉で気持ちを伝え合うようになった時に、親が説明を省いてばかりだと、子は「命令された」「自分の気持ちを考えてもらえていない」と感じてしまうかもしれません。そうした言い方を子が真似して、親に返すこともあるでしょう。
その時に、自分の言い方を振り返らず、子どもだけを叱ってしまう。そんなやり取りになる可能性もあると思うのです。
子どもは「返してくれる存在」だと、わたしは思っています。良いことも、悪いことも。だからこそ、親のほうから丁寧に言葉をかけ、自分の意思を伝えていきたい。日々の接し方から「大切にされている」と感じてもらえたら、親としてとても嬉しいです。
「三つ子の魂百まで」という言葉があります。幼い頃から重ねてきた関わり方は、その先にも残っていく。当時から大切にしている感覚です。親子の関係は、小さかったあの頃から、現在を通り過ぎ、この先の日々へと育まれ続けていくのではないでしょうか。
顔を見せ、声をかけ、触れながらお世話をする。一人の相手として誠実に向き合ってみる。新生児との小さな関わりにも、これからの親子の関係を、よりよいものにしていける可能性がある。わたしは、そう思っています。
参考資料
- 厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」用語の解説(新生児の定義)
- 米国小児科学会(AAP)Infant Vision Development: What Can Babies See?(新生児の見え方)
- 米国小児科学会(AAP)Emotional & Social Development in Babies: Birth Through 3 Months(笑い返す反応と、安心感を支える関わり)
- NHS First sounds: 0 to 6 months(日常のお世話と言葉の経験)
- NHS Understanding your baby(顔・声・ふれあい、休息の手掛かり)
- こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように」(眠る時の寝床と姿勢)
