セルフねんねと抱っこ寝かしつけ|どっちもあっていい、と思える心構え
「抱っこでしか寝てくれない。このままでいいのかな」
——腕の中で眠ったわが子をそっと布団に置いた瞬間、背中スイッチが入って泣き出す。抱っこねんね派のおうちで、ほとんどの方が一度は経験するのではないでしょうか。わたしも寝かしつけには多くの時間を費やしました。
この記事を見ている方の中には、「セルフねんね」という言葉を見るたび、「うちもさせたほうがいいのかな」「でも、泣かせるのはかわいそう」と、答えの出ない問いがぐるぐるしている人もいると思います。
わたし自身は、子どもを抱っこ一辺倒で育てました。そもそも「セルフねんね」という言葉さえ、当時はよく知らなかったくらいです。だから「この方法で寝かしつけをしていて、本当に良いのかな?」と悩む気持ちは、よくわかります。
この記事では、セルフねんねのやり方・始める時期といった実用的なところを整理しつつ、「抱っこのままでも大丈夫」と思える根拠と心構えまで、いっしょに見ていけたらと思います。
先に、いちばん伝えたいことを置いておきます。
最初に伝えたいこと
- セルフねんねは「させなきゃ」ではない
- 抱っこねんねを「しちゃダメ」でもない
- 「できる・できない」で、親子の絆に悪い影響が出るわけではない
- どんな子もいつかは必ず一人で眠れるようになる
つまり、抱っこねんねでも、セルフねんねでも、どちらになっても良いのです。
そもそも「セルフねんね」って?
この言葉はよく聞かれるようになりました。実際のところ何を指すのか。まずは輪郭を整理しておきます。
セルフねんねとは、赤ちゃんが抱っこや授乳に頼らず、自分の力で寝つくこと。その練習をすることを「ねんねトレーニング(ネントレ)」と呼びます。
始める時期にはっきりした決まりはありませんが、以下のように考えられています。
一般的な目安:生後4〜6ヶ月ごろ
睡眠リズムが整い、夜間の授乳が減ってくる時期。少し早めに、3か月くらいから始める家庭もあるようです。
まだ無理しないほうがいい時期:新生児〜生後3ヶ月
このくらいの低月齢のうちは、長く泣かせて見守る方式はまだ早いと考えられています。泣いているのは「不安を伝えているサイン」とも言われます。肌に触れ、声をかけ、「傍にいるから安心して良いよ」と伝える時期なのかもしれません。
身につくまでの期間は、早い子で2週間〜1ヶ月ほど。とくに始めてからの最初の3日間が、いちばん泣く山場だと言われます。そこを越えると、少しずつ変化が見え始めることが多いようです。
セルフねんねには期待されるメリットがある反面、もちろんデメリットもあります。
セルフねんねのメリット
- 夜中に目を覚ましても自分で寝つきやすくなる
- 就寝が早くなる子もいる
- 親の寝かしつけの負担が減る
セルフねんねのデメリット
- 身につくまで時間がかかる
- 環境や子に合わないと、うまくいかない可能性もある
- 親自身が、「泣かせるのがつらい」と感じてしまうかもしれない
方法にはいくつかの系統があります。
セルフねんねの系統
- ジーナ式:生活スケジュールをきっちり管理する
- ファーバー式(タイムメソッド):決めた間隔を空けて様子を見る
- 泣かせない系:抱っこで安心させながら進める
どれが正解、という話ではありません。この記事では「こういう選択肢がある」とだけ知っておけば十分です。
「抱っこでしか寝ない」は、悪いこと?
多くの方がいちばん気にしているのは、ここだと思います。結論から言えば、まったく悪いことではありません。
そもそも、生後0〜3ヶ月の赤ちゃんが「抱っこじゃないと寝られない」のは、ごく当たり前のこと。むしろ自然な姿です。
わたしの場合も、子どもが1歳ごろになるまで、抱っこと子守唄で寝かしつけていました。腕の中で、体がフニャッと緩んでいく瞬間。子守唄に合わせて呼吸が深くなっていくのを感じるたびに、「ちゃんと声が届いているんだな」と、しみじみ嬉しかったのを覚えています。抱っこでの寝かしつけは、ただ寝かせるための手段ではなく、肌のぬくもりや声を通して、安心感を育む時間でもあります。
「背中スイッチ」はなぜ入るのか
布団に置いたとたん泣く——あの背中スイッチには、理由があると言われています。ひとつは、あたたかい腕の中から冷たい布団へと、まわりの状態が急に変わってびっくりすること。もうひとつは、体が離れる瞬間に「落ちる」と感じてしまうことです。
よく紹介される対策は2つ。ひとつは、仰向けではなく横向きの姿勢で布団に着地させ、落ち着いてから仰向けに戻すこと。もうひとつは、抱っこのあと15〜20分ほど、ぐっすり眠るのを待ってから置くことです。
わたしが実践していたコツは、似ているようで少し違いました。赤ちゃんが目を閉じ、「寝たかな?」と思ったあとも静かに抱き続け、手足が「だらん」と完全に力の抜けるタイミングまで待ちます。背中スイッチがどうしても嫌なときは、そこまで待ってから置くと、成功しやすい。
手足のだらんは、普段はだいたい5〜10分で訪れますが、満月や新月、お天気の荒れている夜は、なぜか時間がかかる傾向にありました。
腕からの下ろし方そのもの(お腹を最後にゆっくり離すコツなど)は、別の記事で詳しくまとめています。
そして「抱っこ=ねんね」という結びつきは、心配しなくても、成長とともに少しずつほどいていけます。だから今、抱っこでしか寝なくても、それは「直さなきゃいけない癖」ではないので安心してください。
セルフねんねの進め方
「やってみようかな」と思ったときのために、進め方の例を整理しておきます。基本の考え方は、関わりを一気にゼロにするのではなく、段階的に少しずつ減らしていくことです。
セルフねんねステップ
- まず抱っこであやし、トントンしながら布団に置く。
- 布団で横になれたら、トントンに「小さな子守唄」をプラスして落ち着かせる。静かになってきたら、歌をやめ、トントンもゆっくりにしていく。
- 何もせず静かになったら、布団に置いて部屋を出てみる。
- 泣いても少し見守り、5〜10分後に戻って声をかけたり、トントンしたりする。
見守る時間は、1〜2週間かけて少しずつ延ばしていくのがコツです。難しければ、見守りは2〜3分、つらければ1分から。無理なら抱っこで落ち着かせて、もう一度寝床に置けば大丈夫です。
寝室の環境も、思っている以上に重要です。遮光カーテンで部屋を真っ暗にし、授乳やおむつ替えのときは暖色系の小さなライトだけにする。室温は20度前後だと、寝つくまでが短くなりやすいと言われます。
そして毎晩、寝る前の行動を同じ順番にしてあげること。「お風呂→絵本→布団」のように決まっていると、赤ちゃんが「これが終わったら寝る時間だ」と予測できるようになります。Nicoriとしておすすめしたいのは、このルーティンの中に、子守唄や声かけを入れておくこと。流れのリズムだけでなく、親が傍にいる安心感を渡せます。
うまくいかないと感じる夜もあると思います。そんなときはおおらかに構えて、少し泣くくらいなら見守り、激しく泣くときだけあやす。焦らず、子どものペースで進めれば十分です。
子守唄と声かけで、安心を渡しながら
ここが、わたしがいちばん伝えたいところです。
ネントレと聞くと「泣いてもひとりにする」イメージがあるかもしれません。でも調べてみると、どの方法も、声をかけること自体は禁じていません。ファーバー式でさえ、決めた間隔で部屋に戻り、「大丈夫だよ」と声をかけたり、背中をさすってなだめたりするのが手順の一部です。控えるのは抱っこや授乳であって、声ではないのです。だから、声で「ここにいるよ」と伝えながら見守って、まったくかまいません。
わたしが子どもを抱っこから一人ねんねへ移していったときも、添い寝しながら、子守唄を唄っていました。布団で横になることに少しずつ慣らしながら、一人で眠る練習をしていった感じです。
ここで、ネントレで言う「最初の3日」を、少し違う角度から考えてみます。
腕の中ではなく自分ひとりで眠りに落ちていく感覚は、新生児や低月齢の赤ちゃんにとっては、きっと心細いものです。この最初の3日は、「泣くのを乗り越える試練」というより、その心細さを、時間をかけて安心に変えていく期間なのだと思います。
赤ちゃん自身には、自覚も意識もないと思います。でも、そのどうしようもなく不安な時間を、近すぎず・遠すぎず、穏やかに見守る。これは、何で泣いているのか分からない「どうしようもない泣き」に寄り添うときと、同じ姿勢です。
「ひとりで眠っても大丈夫なんだ」と赤ちゃんが少しずつ理解していく——その過程を、声を添えながら見守ること自体が、ひとつの愛情表現なのだと、わたしは思っています。
セルフねんねと抱っこ、どっちが正解?
結論としては、どちらを選んでも、大丈夫です。ネントレをしてもしなくても、親子の絆や安心感に悪い影響が出るという根拠は見つかっていない、と専門家も説明しています。「セルフねんねさせたから愛情が足りない」わけでも、「抱っこを続けたから自立できなくなる」わけでもない。どちらを選んでも、そこに優劣はないということです。
そして、どんな子もいつかは必ず、一人で眠れるようになります。今の状態が、ずっと続くわけではありません。
わたし自身が理想だと思うのは、二択ではなく、その両方を持っておくこと。「ひとりでも寝られる。でも、つらい夜は抱っこで安心を補給する」——どちらかに決めきらず、状況に合わせて行き来できる状態です。
ただ、どちらがメインになるかは、選ぼうと思って選べるものでもありません。子どもの個性もあれば、その時期の赤ちゃんの体調や、親の余裕の有無もある。「セルフねんねさせたかったのに、うちの子はどうしても無理だった」も、「抱っこを続けたかったのに、気づいたら一人で寝ていた」も、どちらも起こりうることです。
だからこそ——これがこの記事でいちばん伝えたいことなのですが——「どっちにもなりうる」と構えておくことが、親が前を向いていられる秘訣なのだと思います。どちらか一方を「正解」と決めてしまうと、そうならなかったときに苦しくなる。最初から「どっちもあっていい」と思えていれば、目の前の子のペースを、そのまま受け止めていけるはずです。
(パパの寝かしつけで泣かれてしまう、と悩んでいるご家庭はこちら → パパの寝かしつけで泣かれてしまう夜に|「泣き止ませる」より大切なこと)
もし、セルフねんねを試すなら
少し試してみようと思ったときのために、心に留めておきたいことを書いておきます。
わたしは抱っこ一辺倒だったぶん、うちの子は「抱っこでしか寝ない子」になりました。今になって思えば、一人で眠る練習をするタイミングがどこかにあったのかもしれません。ただ、これはあくまでわたしの振り返りであって、「早くやるべき」という話ではありませんし、抱っこで過ごしたあの時間を、後悔しているわけでは決してありません。試すかどうかも、いつ試すかも、それぞれの家庭が決めていいことです。
もし試すなら、泣かせ方も家庭の選択でかまいません。見守るのがつらければ、見守る時間を短くする。「今日はもうやめておこう」と途中で抱き上げてもいい。無理だけは、しないでください。
一人で寝かせるときの、安全のこと
一人で寝かせるときは、いくつか整えておきたいことがあります。赤ちゃんを寝かせるときは仰向けに。敷布団は固めのものを選び、顔のまわりには、タオルやぬいぐるみなど、口や鼻をふさぎそうなものを置かないようにします。掛け布団も顔にかかることがあるので、特に低月齢のうちは、布団よりもスリーパーなどの「着るもの」と、空調で暖かさを調整してあげると安心です。こうした寝床の整え方は、特に生後2〜6ヶ月ごろは意識しておくといいと言われています。赤ちゃんの安全な睡眠については、公的機関の情報もあわせて参考にしてみてください。
うまくいかない夜の「心構え」
どんなに整えても、なぜか寝てくれない夜は、必ずあります。最後に、そういう夜の受け止め方を。
わが家には、ひとつ気づいたことがありました。新月と満月の夜は、なぜか大泣きで、なかなか寝てくれないことが多かったんです。そんな日は、友人の家の同年代の赤ちゃんも、同じ様に大泣きだったことも何度かあります。明確な理由はわかりません。でも「あ、今日はそういう日か」と受け止めるようにしたら、同じようにしんどい夜でも、不思議と少し穏やかな気持ちでいられるようになりました。
うまくいかない理由を、すべて自分の中に探さなくていいのだと思います。「今日はそういう日」「この子にも、そういう時期がある」——そう納得できることが、親の心を、思っている以上に支えてくれます。
だから、うまくいかない夜があっても、どうか気楽に。「そんな日もある」と、肩の力を抜いてみてください。
さいごに
セルフねんねも、抱っこでの寝かしつけも、どちらかが正解でどちらかが間違い、というものではありません。
できてもできなくても、親子の絆や安心感に悪い影響が出る根拠は見つかっていない。そして、どんな子もいつかは一人で眠れるようになる。だとすれば、今このとき、どちらを選んでいても、大丈夫なのだと思います。
理想を言えば、「ひとりでも寝られる、でも、不安な夜は抱っこで安心を渡す」——その両方を行き来できたらいい。でも、どちらがメインになるかは、選べないことも多い。だからこそ、「どっちにもなりうる」と構えておく。その心構えひとつで、目の前の子のペースを、そのまま受け止めていけるようになります。
セルフねんねがうまくいかず、抱っこで寝かしつけを続けるおうちも、少なからずあることでしょう。それでも、抱っこで過ごす夜は、いつか必ず終わります。そう思うと、今しかないこの時間が、少しだけいとおしく感じられるかもしれません。
あなたが、どんな寝かしつけに行き着くかは、まだわかりません。でも、どんな寝かしつけだったとしても、わが子と過ごすかけがえのない時間なのかもしれません。たいへんだった夜を振り返り、わたしは今、そう感じています。どうかその瞬間を、可能な限り味わってもらえたらと思います。
出典
こども家庭庁「赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~」
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids
